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研究内容

 砂漠化や温暖化の影響を受ける地域, 耕作放棄地の多い中山間地域を対象に,スーパーフードとして知られる,アワ,キビ,ヒエなどの雑穀や大豆の生産性の向上を研究しています. 農学研究は,人類と地球の未来を対象にできる,深くて広い,興味の尽きない分野です.当研究室では,分子・細胞レベルと群落レベルのミッシングリングをつなぐため,器官・個体レベルの作物の反応を明らかにしています.信州の大自然に囲まれて,日本や世界の農業,そして地球の未来をとことん,考えてみませんか?

研究から広がる未来

 これから地球に住み続けられるかどうかは,私たちが何を食べ,どのような生活をするか,どのような農業をするかにかかっています.

 地球の資源を使い尽くさず,環境を悪化させずに食料生産を続けるための,新たな「メタ知識(これまで誰も見たことのない知を生み出す知)」を身につけることを目標としています.

​ 研究手法としては,様々な現象を作物の個体レベルや組織レベルで証明する栽培実験を重要としています.遺伝子や化学物質の情報を個体レベルで証明できるのか?これを証明できれば,農業生産の向上に効率的に貢献できます.

たかが根 されど根

生きている根の中で何が起こっているのか?

サマイ(Panicum sumatrense)の根

サマイは,インド固有の雑穀です.キンエノコロと一緒に栽培されることがあり,干ばつが続くとキンエノコロが,雨が多いとサマイが多く収穫できます.サマイの根の内部には通気組織が形成され,根の周囲の酸素が低下しても通気組織を通じて地上部から根の先端へ酸素が拡散されます.

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ヒエ(Echinochloa crus-galli subsp. utilis)の根

  ヒエは唯一,日本が栽培起源地の一つとされる雑穀.生育期間が短く,成長速度が速く,乾燥回避性(生育期間が短いために乾燥に遭遇する期間が短い),耐湿性,耐寒性,高温耐性,耐塩性が強い.

  日本では,寒冷地での水稲栽培が確立されるまで,北日本の山間地域で重要な食料であった.食物繊維やカルシウムや鉄なども多く含まれている.

  温暖化の進行によって気温や降水量が変動しても,災害時でも,生育期間が短く環境ストレス耐性が強いヒエは世界各地の平坦地から山間地域まで広く栽培できる栄養穀物である.

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テフ(Eragrostis tef)の根

  テフは世界最小の雑穀.一度見失ったら見つけられない「紛失」という意味がある.なぜこんなに小さい雑穀が食用になるのか?

  テフの根にも通気組織が形成されているため湿害に強いことが明らかになった.そのうえ,耐乾性,耐塩性,高温耐性にも強い.

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アワ(Setaria italica)の根

  アワはキビとともに最古の作物の一つといわれ,世界で広く栽培されている.とくに耐乾性が強く,多量の細い根を形成する.残念ながら根の内部の通気組織の形成はたいへん遅いため,湿害には弱い.

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